紫外線とインド風水ヴァーストゥ

紫外線についての正しい知識を持つことが大切


 紫外線に対する関心は日本でも少しずつ高まってきています。オゾン層破壊による紫外線増加といった環境問題としての関心だけでなく、紫外線の浴びすぎによる健康への影響についても同様です。紫外線の浴びすぎは、日焼け、しわ、シミ等の原因となるだけでなく、長年紫外線を浴び続けていると、時には良性、悪性の腫瘍や白内障等を引き起こすことがあります。

 しかし、紫外線は悪い影響ばかりではなく、カルシウム代謝に重要な役割を果たすビタミンDを皮膚で合成する手助けもします。最適な紫外線量には個人差がありますが、正しい知識を持ち、紫外線の浴びすぎに注意しながら上手に紫外線とつきあっていくことが大切です。


紫外線のウソ、ホント


 以下の紫外線に関する質問について正しいか間違っているかを答えてみてください。

① 日焼け(サンタン)は健康的である。
② 日焼け(サンタン)は太陽紫外線を防いでくれる。
③ 曇った日には日焼け(サンバーン、サンタン)をしない。
④ 水辺では日焼け(サンバーン、サンタン)をしない。
⑤ 冬の間の紫外線は危険ではない。
⑥ 日焼け止めを塗っていれば、非常に長い時間日光を浴びても大丈夫である。
⑦ 日光浴の途中で定期的に休憩をとると、日焼け(サンバーン、サンタン)を起こさない。
⑧ 太陽の光に暑さを感じない時には、日焼け(サンバーン、サンタン)を起こさない。

 これらはすべて間違いです。

 さて、次の質問はどうでしょう?
① 日焼け(サンタン)は、私たちの体が紫外線による被害を防ごうとする防衛反応だがその効果は小さく、注意信号と考えるべき。
② 薄い雲の場合、紫外線の80%以上が通過する。
③ 水面の反射は紫外線のばく露を増やすといえる。また、水はわずかな紫外線しか防いでくれない。
④ 一般的に冬の紫外線は弱いが、例えば、雪による反射により2倍近いばく露となる。特に、高い山では注意が必要。
⑤ 日焼け止めは紫外線を浴びることが避けられないときに、防止効果を高めるものだが、太陽に長時間あたるために使用するのは間違い。
⑥ 紫外線ばく露は一日をとおして蓄積されていく。
⑦ サンバーンは私たちが感じることのできない紫外線によるもの。暑さを感じるのは赤外線によるもので、紫外線ではない。

 これらはすべて正解です。

 世界保健機関(WHO)では、「Global Solar UV Index-A Practical Guide」として紫外線に関するガイドブックを出していますが、これらはその中にまとめられている「紫外線のうそ・ほんと」に基づいています。



紫外線の反射と透過.jpg紫外線の反射と透過(出典:”Global Solar UV Index-A Practical Guide”, WHO, WMO, UNEP他, 2002)

紫外線の性質


 紫外線は私たちの目には見えませんが、太陽光(日射)の一部であり、基本的な性質は可視光線と同じです。季節や時刻、天候などにより紫外線の絶対量や日射量に占める割合は変化しますが、可視光線と同じように、建物や衣類などでその大部分が遮断されます。

 一方、日中は日陰でも明るいように、大気中での散乱も相当に大きいことがわかっています。つまり、私たちが浴びる紫外線は、直接太陽から届くもの(直達光)だけでなく、空気中で散乱して届くもの(散乱光)、さらに、地面等で反射して届くもの(反射光)があります。

 紫外線の強さは、時刻や季節、さらに天候、オゾン量によって大きく変わります。同じ気象条件の場合、太陽が頭上にくるほど強い紫外線が届きます。一日のうちでは正午ごろに最も紫外線が強くなります。

 日本では紫外線は一般に北から南へ行くにしたがって多くなる傾向があります。年間の紫外線量は、沖縄と北海道で2倍程度の違いが見られます。紫外線は、季節別に見ると、夏に強く冬に弱くなります。また時刻別に見ると、正午前後、正確には各地区で太陽が最も高くなるとき(南中時)に紫外線は最も強くなります。

 山に登ると空気が薄く、より強い紫外線が届きます。標高の高いところに住む人たちは強い紫外線を浴びるために、標高の低い土地に暮らす人と比較して大きな影響を受けます。また、雪や砂は紫外線を強く反射するので、スキーや海水浴のときには、強い日焼けをしやすくなります。

 紫外線の強さに時間をかけたものが紫外線量になります。従って、弱い紫外線でも長い時間浴びた場合の紫外線量は、強い紫外線を短時間浴びた場合と同じになることもありますので注意が必要です。

 これらのことは私たちの生活にとって非常に重要なことです。住む場所は別として、季節や時刻を考えて戸外での活動を行えば、紫外線へのばく露を大幅に少なくすることが可能になります。実際にどの程度紫外線を浴びるかは一人一人の行動によって異なります。同じ地域でも季節や一人一人の生活スタイル、特に日中の戸外活動時間によって紫外線ばく露量は大きく異なっていることがわかっています。

 「住む場所は別として」と述べましたが、住居も重要でしょう。特に日本人が「信仰」しているいわゆる南向きの日当たりのいい住宅では、それ以外に比べ大幅に紫外線量は増えるはずです。「夏の場合は、太陽の位置が高いので陽は室内に入らないからよい」という反論があるかもしれませんが、先述のとおり紫外線は直接太陽から届くものだけでなく、空気中で散乱して届くもの、さらに、地面等で反射して届くものがありますので安心はできません。

 インド風水ヴァーストゥでは、立地、敷地、間取り、インテリア、生活行動の全てで朝の日光を取り入れる原則があります。他方、南から西にかけての光をなるべく少なくする、つまり日中や夕方の日光を浴びないという原則もあります。以上の点から、インド風水ヴァーストゥ非常に合理的な考え方ではないでしょうか。


豪州ダーウィンにおける2002年3月27日の紫外線量の推移.jpg豪州ダーウィンにおける2002年3月27日の紫外線量の推移(出典:”Global Solar UV Index-A Practical Guide”, WHO, WMO, UNEP他, 2002)

紫外線量は今後さらに増える可能性もある


 皆さんは「オゾン層の破壊」という言葉を聞いたことがあると思いますが、少しおさらいしてみたいと思います。

 オゾンは、地上付近から50km以上の高さにまで広く分布しており、このオゾン層が紫外線をさえぎって、地球上の生命を守っています。ところがスプレーの噴射剤、エアコンや冷蔵庫などの冷媒、断熱材の発泡、半導体の洗浄など、幅広く使われてきたフロンという物質がオゾンを破壊することがわかりました。

 こうしたフロンなどのオゾン層破壊物質の大気中への放出を抑制するため、世界的に協調して、それらの生産や輸出入を規制する対策がとられています。

 日本上空のオゾン全量は主に1980 年代に明らかな減少傾向が見られていましたが、1990 年代後半以降にはわずかな増加傾向が見られます。とはいっても2006 年のオゾン全量を1979 年と比較すると国内3 観測地点の平均で1.7%、札幌では4.3%減少しています。

 以上のように、オゾン層が破壊され、紫外線量が今後さらに増える可能性も残っている不透明な現状で、「紫外線ばく露は生活の仕方しだいで大きく変わる」と以前書きましたが、このことは非常に重要な意味を私たちの健康に持っているのではないでしょうか。ここから少し我々に最も重要な紫外線による健康影響について考えていきたいと思います。

紫外線の健康影響 ~浴びすぎるとお肌と眼に悪影響~


 紫外線が増加すると、水上・陸上の生態系や農業生産への影響のほかに、人へのさまざまな悪影響があります。多くの研究により、紫外線を浴びすぎると人の健康に影響があることがわかってきました。

 急性の症状については、①日焼け(サンバーン、サンタン)、②紫外線角膜炎(雪目)、③免疫機能低下。慢性の皮膚の症状については、①シワ( 菱形皮膚)、②シミ、日光黒子、③良性腫瘍、④前がん症(日光角化症、悪性黒子)、⑤皮膚がん。慢性の目の症状については、①白内障、②翼状片です。特に女性にとって気になる症状が並んでいることがわかります。先述のとおり、紫外線の影響は家の中でも決して無視できないわけですが、非常に残念なことに一般に外出時にしか日焼け止め対策をしていない人が多いのが現状です。


Enjoy the sun but enjoy it safely.png

紫外線の健康影響 ~浴びすぎるとお肌と眼に悪影響~


 紫外線が増加すると、水上・陸上の生態系や農業生産への影響のほかに、人へのさまざまな悪影響があります。多くの研究により、紫外線を浴びすぎると人の健康に影響があることがわかってきました。

 急性の症状については、①日焼け(サンバーン、サンタン)、②紫外線角膜炎(雪目)、③免疫機能低下。慢性の皮膚の症状については、①シワ( 菱形皮膚)、②シミ、日光黒子、③良性腫瘍、④前がん症(日光角化症、悪性黒子)、⑤皮膚がん。慢性の目の症状については、①白内障、②翼状片です。特に女性にとって気になる症状が並んでいることがわかります。先述のとおり、紫外線の影響は家の中でも決して無視できないわけですが、非常に残念なことに一般に外出時にしか日焼け止め対策をしていない人が多いのが現状です。


お肌への影響 ~シワ、しみの原因は紫外線が大きい~


 紫外線による健康影響についてもう少し詳しく見ていきましょう。まずは紫外線の皮膚への影響です。

 皮膚は表皮と真皮から出来ています。表皮は皮膚の最も外側にあり、角化細胞が90%以上を占めています。そのほかメラニン色素を作る色素細胞と免疫機能を司る細胞も表皮内にあります。真皮は膠原線維(コラーゲン)が主で皮膚の丈夫さを保ち、弾性線維は皮膚の張りを保ちます。

 皮膚には紫外線から身を守る仕組みが備わっています。最も強力な光線防御は色素細胞が作るメラニン色素です。メラニンは紫外線、可視光線、赤外線を吸収して、DNAへのダメージを少なくします。

 人間の皮膚の色はさまざまです。それは黒褐色のメラニン色素のためで、メラニンが多いほど肌の色は黒くなり、紫外線に対して抵抗性があります。白人では紫外線を浴びても赤くなるだけで、あまり褐色になりません。日本人は赤くなるとその後数日して褐色になります。日本人でも色白で、日光にあたると赤くなりやすくて、黒くなりにくい人は紫外線対策が必要です。また、肌の色が黒い方が紫外線に対して抵抗力があるからといって、むやみに日焼けすることは良くありません。

 地表にいる我々が浴びる紫外線のうち、皮膚や目に有害なUV-Bは量は少ないのですが、皮膚の細胞のDNAに傷をつけてしまいます。皮膚の細胞にはこのDNAの傷を切り取って正しいDNAに戻す仕組みが備わっています。しかし、DNAの傷害が度重なると、直し間違いが起こり、誤った遺伝情報(突然変異)が生じることがあり、それが皮膚がんの原因になると考えられています。

 我々は子供のうちに大量の紫外線を浴びていると考えられます。その影響は何十年もたってから現れてきます。子供のうちから紫外線を浴びすぎないよう、帽子、衣類、日焼け止めなどによる紫外線防御を心掛けることが大切です。

 紫外線の皮膚への影響は、太陽にあたってすぐにみられる急性傷害と、長年にわたってあたり続けて現れる慢性傷害に分けて考えることができます。慢性傷害については、長年日光を浴び続けていると、皮膚のシミやしわ、ときには良性、悪性の腫瘍が現れてきます。お年寄りの顔や手の甲に見られるこれらの変化は、一般に加齢による老化と思われがちですが、実は紫外線による慢性傷害の結果であり、光老化は加齢による自然の老化とは異なり、適切な紫外線防御対策により防ぐことができるものです。

 紫外線に関連してできる皮膚の腫瘍には良性のもの(脂漏性角化症)と悪性のもの(皮膚がん)があります。UV-Bのばく露と関連することが知られている皮膚がんとしては、前がん症である日光角化症と有棘細胞がんがあります。日光角化症の段階で治療すれば生命に関わることはありませんが、治療しないとより悪性化し、転移すれば生命に関わります(ただ、統計的には日本は韓国やタイと並んで、世界で最も皮膚がんの少ない国です)。


基底細胞癌.jpg基底細胞癌(出典:”Global Solar UV Index-A Practical Guide”, WHO, WMO, UNEP他, 2002)
扁平上皮癌.jpg扁平上皮癌(出典:”Global Solar UV Index-A Practical Guide”, WHO, WMO, UNEP他, 2002)悪性黒色腫.jpg悪性黒色腫(出典:”Global Solar UV Index-A Practical Guide”, WHO, WMO, UNEP他, 2002)

眼への影響 ~失明の危険もある~


 つぎに紫外線の眼への影響を見ていきます。

 紫外線ばく露による眼への影響については、急性の紫外線角膜炎と慢性の翼状片、白内障が知られています。
 翼状片は、眼球結膜(白目)が翼状に角膜(黒目)に侵入する線維性の増殖組織で、瞳孔近くまで進展すると視力障害をきたします。通常は30 歳代以降に発症し、進行は早くありません。農業、漁業従事者など戸外での活動時間が長い人に多発し、紫外線ばく露を含めた外的刺激がその発症に関係すると考えられています。治療は外科的な切除を行いますが、27%の人は再発し再手術が必要になります。

 白内障は、眼科疾患の中で最も多い病気のひとつで、眼のなかでレンズの役割を担う水晶体が濁るため、網膜まで光が届かなくなり見え方の質が低下してきます。初期には水晶体が硬くなるため老眼が進行し、濁りが強くなると視力が低下し、進行すると失明に至ります。白内障は80以上のタイプがあるといわれていますが、加齢により発症する白内障には3つの代表的なタイプがあり、それぞれ原因や見え方への影響も異なります。日本人で最も多く見られる皮質白内障というタイプでは、紫外線との関係が知られています。治療は混濁した水晶体を眼内レンズと置換する手術が行われます。

ビタミンDのためには15分程度の暴露でよい

 本来ビタミンとは、体には欠かすことができない栄養素で、食物からしか得ることのできない微量物質のことを指していました。ところがビタミンDは自分の体の中で合成することができます。体の中でビタミンDが合成される場所は皮膚であり、そして合成には紫外線の助けが必要となります。

 ビタミンDの主な働きはカルシウム代謝の調整です。体内のカルシウム環境は消化管、骨、腎臓の働きによって保たれていますが、ビタミンDはこれら3つの臓器に働く重要なビタミンです。食物から摂取したり、皮膚で合成されたりしたビタミンDはそのままでは働くことができません。肝臓と腎臓で「活性化」されてはじめて効果を発揮します。

 カルシウム摂取不足やビタミンD不足になると、骨から溶け出すカルシウムの増加などにより、カルシウム蓄積が減少して骨が弱くなり、骨折の危険性も増します。骨粗鬆症の原因のひとつとも考えられています。最近では、ビタミンDは筋肉にも作用することによって高齢者の転倒予防にも役立つことが報告されています。また、妊婦さんにおけるビタミンD不足は赤ちゃんの骨の発育に影響を与え、ビタミンD不足の妊婦さんから生まれた赤ちゃんの将来の骨量が低くなることが報告されています。小児期においても、母乳栄養の赤ちゃんやアレルギーなどで食事制限をしている子供はビタミンD不足になりやすいといわれています。

 では、ビタミンDは一日どのくらい摂取しなければならないのでしょうか?「日本人の食事摂取基準(2005 年度版)」によると、年齢にもよりますが、1日4 5 μgが目安量となっています。また妊娠中や授乳中の女性はこの1.5 倍が勧められています。ただし、カルシウム代謝の面から調査した場合、少なくとも中高年女性の半数近くがビタミンD不足であることが報告されています。これらの点を踏まえて、骨粗鬆症の予防と治療に必要なビタミンDは一日あたり10 20 μg(400 800 国際単位)とされています。
 ビタミンDの摂取は、まず食事からが基本です。食品としてビタミンDを多く含むものは魚類ときのこ類です。これらのうちどれかが毎日の食事に含まれていれば、ビタミンD不足にはなりにくいと考えられます。

 しかしながら、実際はカルシウム代謝の点では食事から摂取するビタミンDだけでは不足気味です。やはり、日光による合成もうまく利用することが必要です。皮膚で作られたビタミンDはビタミンDの運び役(ビタミンD結合蛋白質)によってすぐに運ばれるため、消化管から吸収されるビタミンDよりも体の中で使われやすいと考えられています。

 とはいっても日焼けをするほどの「日光浴」が必要なのではなく、日本が位置する緯度を考えると、両手の甲くらいの面積が15 分間日光にあたる程度、または日陰で30 分間くらい過ごす程度で、食品から平均的に摂取されるビタミンDとあわせて十分なビタミンDが供給されるものと思われます。介護の必要な高齢者や妊婦さん、授乳中の女性などでは屋外に出る時間をもうけることや、屋内においてもガラスを通さない日光にあたる時間をもうけることが望まれます。

 要するにインド風水ヴァースツで重視する朝の日光を浴びる程度でビタミンDを合成するのに十分なのです。それ以上は、健康や美容への悪影響が非常に大きいというのは先述のとおりです。


紫外線の浴びすぎは取り返しがつかない


 紫外線の浴びすぎを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。

 日焼けしてからローションなどで肌の手入れをすることは、ひりひりとした日焼けの痛みを押さえるなどの効果はあるとされています。しかし、皮膚の老化を防ぐなどの長期的な予防効果は少ないと考えられます。長期的な健康への悪影響予防のためには、紫外線の浴びすぎを防止することが重要です。

 紫外線の影響は、地域や個人によって異なりますが、紫外線の影響が強いと考えられる場合には、状況に応じて、次のような対策を行うことが効果的です。
① 紫外線の強い時間帯を避ける
② 日陰を利用する
③ 日傘を使う、帽子をかぶる
④ 衣服で覆う
⑤ サングラスをかける
⑥ 日焼け止めを上手に使う

 もう少し詳しく見ていきましょう。
① 紫外線の強い時間帯を避ける
 紫外線は、時刻別にみると正午前後、正確には各地区で太陽が最も高くなるとき(南中時)に最も強くなります。紫外線の強い時間帯を避けて戸外生活を楽しむことを第一に考えてください。
② 日陰を利用する
 外出したときなどには、日陰を利用するのもよいでしょう。しかし、あたる紫外線には、太陽からの直接のものだけではなく、空気中で散乱したものや、地面や建物から反射したものもあります。直接日光のあたらない日陰であっても紫外線を浴びていることは忘れないようにしてください。
③ 日傘を使う、帽子をかぶる
 夏の日中など、日差しの強いときの外出には、日傘の利用も効果的です。最近は紫外線防御機能を高めた日傘もあります。また、帽子は直射日光をさえぎってくれます。特に、幅の広いつばのある帽子は、より大きな効果があります。わが国で古くから使用されている麦わら帽子などつばの幅が広い帽子は、日差しの強いときの外出時における紫外線防止に非常に効果的です。
 ただ、日傘や帽子も、太陽からの直接の紫外線は防げますが、大気中で散乱している紫外線まで防ぐことはできません。
④ 衣服で覆う
 袖が長く襟付きのシャツのように、体を覆う部分の多い衣服の方が、首や腕、肩を紫外線から守ってくれます。
 また、皮膚に到達する紫外線を減らすための衣服としてはしっかりした織目・編目を持つ生地を選ぶことです。生地を透かして太陽を見てみれば簡単にわかります。濃い色調で目が詰まっている衣類が一番よいということになりますが、通気性や吸収性が悪いと暑い時期には熱中症の心配がありますので、これにこだわらず戸外で心地よく着ていられるものを選びましょう。
 また衣服や日傘の色についても同様で、特にこだわる必要はないでしょう。
⑤ サングラスをかける
 最近、紫外線から眼を守ることにも関心が向けられるようになってきました。サングラスや紫外線カット眼鏡を適切に使用すると、眼へのばく露を90%カットすることができます。最近では普通のメガネにも紫外線カットのレンズが多く使われるようになってきています。サングラスを使用する場合は紫外線防止効果のはっきり示されたものを選びましょう。
 しかし、眼に照射される太陽光は正面方向からの光だけではありません。上方、側方、下方、さらには後方からの光も眼を直接、間接的に照射しています。レンズサイズの小さな眼鏡や顔の骨格に合わない眼鏡では、正面以外からの紫外線に対しては十分な防止効果を期待できません。強い太陽光の下で目を護るためには、ゴーグルタイプとまではいかなくても、顔にフィットした、ある程度の大きさを持つ眼鏡をかけ、帽子もかぶるとよいでしょう。
 なお、色の濃いサングラスをかけると、眼に入る光の量が少なくなるため瞳孔が普段より大きく開きます。そのため、紫外線カットの不十分なレンズでは、かえってたくさんの紫外線が眼の中へ侵入し、危険な場合がありますので注意しましょう。
⑥ 日焼け止めを上手に使う
 顔など衣類などで覆うことのできないところには、大人は勿論のこと、子供も上手に日焼け止めを使うのが効果的です。乳児の場合は、紫外線の強い時間帯には外へ出さない、また覆いをするなど工夫すれば、日焼け止めを使わなくてもいいでしょう。

家の中でも紫外線量は蓄積される


 以上のように、紫外線の健康被害を防ぐためには、非常に多くのことに気をつけなければいけません。外出時については、すでに実行している方も多いでしょう。しかし、先述のとおり家の中であっても日本人が信仰している「南向きの家」での紫外線は非常に強いわけですが、家の中で紫外線防止対策をしている方はどれだけいるでしょうか。さすがに家の中でサングラスをかける、日焼け止めを使うなどということを実行している人は少ないでしょう。

 私たちは紫外線に対してあまりにもイノセントです。ばかばかしいと思うかもしれませんが、家の中といえども先述のとおり安心できません。毎日暮らす家の中でも紫外線は毎日蓄積されます。日焼けしてからでは遅すぎるのです。

 インド風水ヴァーストゥで重視する朝は紫外線量が少ない時間帯です。他方、朝の太陽光は、睡眠障害、うつ、ストレス・作業効率の改善に効果があるといいうことはすでにご紹介したとおりです。つまり、インド風水ヴァーストゥは、太陽光のデメリットを抑えつつ、メリットを最大限活かしている合理性な風水なのです。この効果は巷に多くある怪しく信頼性のないものとは違い否定のしようがありません(お疑いの方は出典をご参照ください)。いままでの風水で効果がなかった多くの皆さんは今すぐにでも確実に効果があるインド風水ヴァーストゥの重要法則だけでも実行すべきです。私には日本のパイオニアとしてインド風水ヴァーストゥを日本中に広める使命があると考えています。


まとめ


 「紫外線とインド風水ヴァーストゥ」を簡単にまとめると以下のとおりです。

① 紫外線への認識
 紫外線については、間違った認識が広がっている。例えば、曇った日には日焼け(サンバーン、サンタン)をしない、冬の間の紫外線は危険ではない、日焼け止めを塗っていれば非常に長い時間日光を浴びても大丈夫、太陽の光に暑さを感じない時には日焼け(サンバーン、サンタン)を起こさない、など。
 実際はつぎのような認識が正しい。薄い雲の場合、紫外線の80%以上が通過する、一般的に冬の紫外線は弱いが状況によって注意が必要、日焼け止めは紫外線を浴びることが避けられないときに防止効果を高めるものだが太陽に長時間あたるために使用するのは間違い、紫外線ばく露は一日をとおして蓄積されていく、など。
② 紫外線の性質
 紫外線は、季節や時刻、天候、オゾン層などにより紫外線の絶対量や日射量に占める割合は変化する。同じ気象条件の場合、太陽が頭上にくるほど強い紫外線が届く。時刻別に見ると、正午前後、正確には各地区で太陽が最も高くなるとき(南中時)に紫外線は最も強くなる。日本では紫外線は一般に北から南へ行くにしたがって多くなる傾向がある。年間の紫外線量は、沖縄と北海道で2倍程度の違いが見られる。紫外線は、季節別に見ると、夏に強く冬に弱くなる。
 私たちが浴びる紫外線は、直接太陽から届くもの(直達光)だけでなく、空気中で散乱して届くもの(散乱光)、さらに、地面等で反射して届くもの(反射光)がある。紫外線は、可視光線と同じように、建物や衣類などでその大部分が遮断されるが、日中は日陰でも明るいように、大気中での散乱も相当に大きいことがわかっている。
 紫外線の強さに時間をかけたものが紫外線量になる。従って、弱い紫外線でも長い時間浴びた場合の紫外線量は、強い紫外線を短時間浴びた場合と同じになることもあるので注意が必要。
③ 紫外線による健康影響
 ビタミンD不足になると、カルシウム蓄積が減少して骨が弱くなり、骨折の危険性も増す。骨粗鬆症の原因のひとつとも考えられている。最近では、ビタミンDは筋肉にも作用することによって高齢者の転倒予防にも役立つことが報告されている。また、妊婦のビタミンD不足は赤ちゃんの骨の発育に影響を与え、ビタミンD不足の妊婦から生まれた赤ちゃんの将来の骨量が低くなることが報告されている。小児期においても、母乳栄養の赤ちゃんやアレルギーなどで食事制限をしている子供はビタミンD不足になりやすいといわれている。
 ビタミンDは自分の体の中で合成することができる。体の中でビタミンDが合成される場所は皮膚であり、そして合成には紫外線の助けが必要となる。ビタミンDの摂取は、まず食事からが基本。しかし、実際はカルシウム代謝の点では食事から摂取するビタミンDだけでは不足気味。やはり、日光による合成もうまく利用することが必要。
 とはいっても日焼けをするほどの「日光浴」が必要なのではなく、両手の甲くらいの面積が15 分間日光にあたる程度、または日陰で30 分間くらい過ごす程度で、食品から平均的に摂取されるビタミンDとあわせて十分なビタミンDが供給されるものと思われる。
 紫外線が増加すると、人へのさまざまな悪影響がある。多くの研究により、紫外線を浴びすぎると人の健康に影響があることがわかってきた。
 急性の症状については、(1)日焼け(サンバーン、サンタン)、(2)紫外線角膜炎(雪目)、(3)免疫機能低下。慢性の皮膚の症状については、(1)シワ( 菱形皮膚)、(2)シミ、日光黒子、(3)良性腫瘍、(4)前がん症(日光角化症、悪性黒子)、(5)皮膚がん。慢性の目の症状については、(1)白内障、(2)翼状片。特に女性にとって気になる症状が並んでいることがわかる。
 慢性傷害については、長年日光を浴び続けていると、皮膚のシミやしわ、ときには良性、悪性の腫瘍が現れてくる。お年寄りの顔や手の甲に見られるこれらの変化は、一般に加齢による老化と思われがちだが、実は紫外線による慢性傷害の結果であり、光老化は加齢による自然の老化とは異なり、適切な紫外線防御対策により防ぐことができるもの。
 紫外線に関連してできる皮膚の腫瘍には良性のもの(脂漏性角化症)と悪性のもの(皮膚がん)がある。皮膚がんとしては、前がん症である日光角化症と有棘細胞がんがある。日光角化症の段階で治療すれば生命に関わることはないが、治療しないとより悪性化し、転移すれば生命に関わる。
 紫外線ばく露による眼への影響については、急性の紫外線角膜炎と慢性の翼状片、白内障が知られている。
 日焼けしてからローションなどで肌の手入れをすることは、皮膚の老化を防ぐなどの長期的な予防効果は少ないと考えられる。長期的な健康への悪影響予防のためには、紫外線の浴びすぎを防止することが重要。
④ 紫外線対策
 季節や時刻を考えて戸外での活動を行えば、紫外線へのばく露を大幅に少なくすることが可能になる。
 紫外線の影響は、地域や個人によって異なるが、紫外線の影響が強いと考えられる場合には、状況に応じて、次のような対策を行うことが効果的。(1)紫外線の強い時間帯を避ける、(2)日陰を利用する、(3)日傘を使う・帽子をかぶる、(4)衣服で覆う、(5)サングラスをかける、(6)日焼け止めを上手に使うなど。
 室内でも特に日本人が信仰しているいわゆる南向きの日当たりのいい住宅では、それ以外に比べ大幅に紫外線量は増える。紫外線は直接太陽から届くものだけでなく、空気中で散乱して届くもの、さらに、地面等で反射して届くものがあるので安心はできないから。しかも紫外線は毎日蓄積される。しかし、家の中でサングラスをかける、日焼け止めを使うなどという紫外線防止対策をすることは実際問題難しい。このため間取りやインテリアを変えるのがよい。
⑤ インド風水ヴァースツ
 こうしたインド風水ヴァーストゥで重視する朝の日光は、睡眠障害、うつ、ストレス・作業効率の改善に効果があることが科学的に証明されている。また、朝は紫外線量が少ない時間帯でもあり、このことは、日焼け、しわ、シミ、良性・悪性の腫瘍や白内障等の紫外線の悪影響を日中に比べ抑制できることを意味している。なお、朝の日光だけで骨粗鬆症や筋肉の強化にも作用するビタミンDの合成は十分である。
 このような点で朝の日光を多く取り入れ、日中から夕方にかけての日光を抑制するインド風水ヴァースツの基本原則は、非常に合理的。

(参考文献)
“紫外線環境保健マニュアル”, 環境省境保健部環境安全課, 2008年6月